いぬ1

また闇の奴がやって来る
次の太陽が昇るまでに
やってしまわなければならないことがある
(今度こそしくじりは許されない)
女がカラカラと笑う街の酒場で
俺は確かに呟きを聞くのだ
お前達には出来る訳がない
呟きはビルに木霊し
増幅され
男の鼓膜を破る
女の高笑いは
もはや聞こえなくなる
それは俺達にとっては
好都合なのだ
視覚が闇に奪われた後
俺達は全神経を
鼻腔に集中することが可能になる
お前の残り香を
見つけ易くなるということだ!