パイロット
最近 空を飛ぶことについては
そんなに考えなくなった
子供の頃には
よく憧れたものだ
鳥のように
風のように
自由に空を翔られたら
と願ったものだ
もしも鳥に生まれていたら
そんなこと願いもしなかったのだろう
実現できた夢は
もう夢ではなくなるのだ
20世紀
人類は様々な翼を得た
空を飛ぶことはもはや
移動手段の一形態でしかなくなったのだ
いつしかパイロットになっていたぼくは
幾度となくフライトを繰り返しているうちに
雄大な空からの景色も
それほど感動を覚えるものでもなくなってしまった
自分の中で
こんなものだろうと
予想ができるようになってしまったのだ
大空から見る朝焼けや夕焼け
地表の都市の夜景も
見慣れた街角の景色と
さほど違いはないものなのだ
夢を実現してしまった後の
虚しさったらない!
人は夢を実現しようと
努力している間が
最も幸せなのかも知れない
でもぼくは
いつだって
誰も実現していないことを
未だに夢見ている