熱のある日
             宮本泰子

車庫から出す時
ガリガリ音をさせた

左折するのに右へ行き
狭い道路でUターンに手間取った
「ちゃんと運転せんかね」
「ちゃんとしゆうつもりでも
車が言う事きかん」
途中何度か左へ寄りすぎ
こける と思った

帰りは「心臓に悪いき歩いて行く」
「大丈夫だよ」の一言で乗せられた

バックで道路へ出たものの
切り替えが出来ない
後ろの車が早く行けと合図する
座ったままどうにもならず
やり過ごして信号が何回か変わった
漸く前進 何度か追突しそうになる

一刻も早く帰りたいのに
電気店へ寄ると言う
駐車場の前へ横付けした
「中の車が出れんやいか」
バックを始めたら止まらない
「あたるっ」と叫んだ
「サイドブレーキ引いてくれると思った」
腹の中が煮えくり返った

命の縮む思いをして家の前で降りた
すぐに大きな音がした
ブロック塀と郵便受けを壊した

もう運転は無理かな
その晩 熱が八度七分あった
「熱がある時 運転せられんろうが」





   しあわせ
             宮本泰子

しあわせって何だろう
人間だけが考える欲望

欲望が充たされた時
人情に触れた時
しあわせを感じる

かくれんぼしているしあわせを
見つけることがある
鬼ごっこしているしあわせを
掴まえる事がある

しあわせは優しい
しあわせは温かい
しあわせは穏やか

しあわせは突然逃げ出す事もある
しあわせは身近に存在する
今の私はしあわせ



   リセット
           森 公宏

どこかのゲームみたいに
人生もリセットができたらいいね

『リセットしてしまいたい』と思うとき
いつも弱気な自分が居る

「人生はやり直せないんだからさ…」
「いや、何とでもなるさ」

すごく慎重な自分と
楽天的な自分も居る

四次元生物特有の悩み
果たして僕らは時空を越えられるのか?

どんなに思いが強くたって
僕らにはできないことの方ができることよりも多い

でもね

与えられた時空の中で
できる限りのことをやってみればいいんじゃないか?

どちらかといえば僕は
そんな前向きな自分が登場することを
期待してたりする





   初夢'03
           森 公宏

今年はあまり記憶に残るような夢は見ていない
初物に対して
さして特別な付加価値を
感じている訳ではないが

初夢の内容については不思議に
一年中記憶に残っていたりする

「今年は二日には何も夢なんて見なかった」
ということにしておこう

現でも
いつも夢を見ているようなものだからね





   不思議…
           森 公宏

二十歳過ぎに君と出会って
僕らは恋に落ちた
今考えるとすごく不思議だけど
君は僕の好きなタイプで
僕は君の好きなタイプじゃない
今になって気付いたんだ
う〜ん
僕はネコを被ってたってこと?